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濡れ手でスマホ

私は物心ついたときから今日に至るまである「悩み」を持っている。

 

手汗」だ。

 

手汗がすごい。日常に支障をきたすレベルでひどい。まったくピンとこない人がほとんどだろうが、おそらく同じ悩みを持つ人は鬼のように共感してくれると思う。

 

 

少し手汗について自分の知っていることを述べたい。

正確には「手掌多汗症」という多汗症の一種であり、治療を試みる人もいる。

個人差があり、汗の量がレベル別に別れている。

 

レベル1. 触ると汗をかいているのがはっきりわかる

レベル2. 手のひらを光で晒すと汗ばんでいるのがはっきりわかり水の雫が見える

レベル3. 手を凹めると水たまりが見えるくらい発汗する

 

自分の場合は季節にもよるが、2が日常、集中しているときなどは3ぐらいの症状もザラなので2.5としたい。

手汗治療を謳う病院や医者も存在するが、手の汗を止める代わりに他の部分からの発汗が増える「代償性発汗」という副作用が生じ、治療へのハードルをあげている。

 

ということで私自身、通院するまでの根性はなく手汗と付き合って27年目となる。

ちなみにこの手汗は自分の意志や精神状態とはほぼ無関係に出る。緊張していようがリラックスしていようが関係なく出る。

普通の人も手汗が出るであろうシチュエーション、集中しているときや緊張している時はその分が上乗せして出る。

「そんなことかよ」と思ったそこのアナタ。どんな支障があるかきいてからにして欲しい。

 

悩みは小学生時代まで遡る。

 

友達の家でゲームをするとコントローラーがびしょびしょになる。(引かれる)

遊戯王カードがふやける。

テスト中、用紙がしなっしなになる。消しゴムを使うと紙の繊維が破け風穴が開くのでミスが許されない。

サインする書類がびしょびしょになる。

運転中、ハンドルがびしょびしょになる。

カラオケのマイクがびしょびしょになる。

麻雀中、となりの牌がくっつく。(調子のいいときは両サイドで一面子くらいくっつく)

キーボード、マウスがびしょる。

着ている服の袖がびしょる。

お店で気軽にものに触れない。

人との握手をためらう。

 

ざっと思いつく限りでこんなものである。

とはいってもこれらは言ってしまえば手をタオルで拭いたり、念入りに洗濯や掃除をすることで我慢できなくもない(やっと最近そう思えるようになってきた)症状である。

が、昔は致命的な問題が一つあった。

 

スマホがまともに使えない」のである。

 

 

20くらいの頃、スマホが台頭し始めた。

昔から新しいものはすぐ欲しくなるタチなので、当然自分もウキウキで機種変をしに携帯ショップへ赴いた。

契約手続き中、ふと悪い予感がよぎった。

「これは…手汗でもいけるのか…?」

いや、どうだろう。悪い予感がする。悪い予感しかしない。

ショップのお姉さん「では、端末のロックを解除していただいて…」

鏡のような新品のまっさらなスマホの画面に映る矢印に、恐る恐る指を乗せる。

この時点で焦りもあり、手はレベル3状態になっている。

予感はほぼ確信に変わり、この時点でもう機種変を後悔し始めていた。

恐る恐る濡れた指をスライドすると、「指紋」を超えた、なめくじの這った後のような見事な「濡れ痕」が現れた。

悪い予感が的中した。完全にお姉さんは引いている。

事もあろうにロック画面の矢印は、微小な水滴に誤反応し小刻みに震え、さらにパニックを加速させた。

(うわあ、画面濡れると誤反応で震えるんだあ)とパニックが一周して妙に冷静になりながら、素早く袖で画面を拭き、0.2秒でハンカチで手の水分を拭きロックを解除した。

 

初期のスマートフォンの画面の反応は非常に精度が悪かった。

しかし携帯は使いたい。使えないと困る。

(ちなみにタッチペンなども当時はまだない)

ここで私は人生で一番の発明をした。

 

指の腹(指紋がある方)でなく、手の甲(指の甲とでも呼ぶべきか)側をつかっても反応することに気づく。人差し指第一関節の爪のある側(汗をかかない部分)を使い、自分で言うのも何だがそれは器用にスマホを使いこなした。(周りからは完全に変な目で見られたのでその都度説明した)

スマホで読んでいる方は試してみてください。

これちょっとすごくないですか?

 

機種が新しくなるにつれ、タッチパネルの精度は格段に進歩し(手汗をかかない人にはわからない進歩だが)今では問題なく指の腹で操作できるようになった。画面はびしょびしょのままだが。

 

 

私は「指紋認証」をつかったことがなかった。

「なかった」というのは、先日機種を乗り換え見事克服したからである。

iphoneのホームボタンには指紋認証機能がある。ロックを解除したり、パスワード代わりに使ったりなど画期的な機能だ。

無論手がなめくじ状態では使用できない。3回の認証チャンスを全スルーし、泣きながらパスコードを入力するハメになる。

 

しかしiphone7になってからは飛躍的に認証感度が良くなった。(体感でだが)

あれ、スマホってこんなに簡単に開くんだっけと嬉しくなり、用事もないのに無駄にロック解除を楽しんでいる。もはや捗るどころか革命である。

SIMフリー機なのでかなりの出費だったが、これだけで買った価値がある。

技術者に敬意を表したい。ありがとうございます。

 

 

 

日本人の200人に1人、0.5%が多汗症だと言われているらしい。

その中でも手の汗に悩まされている人はどのくらいいるのか調べようもないが、「手汗治療」を謳う業者や医者は多く、患者も少なくないのが想像できる。

 

医者はともかくとして、この「業者」というのがすこし謎の存在である。

「手汗 治療」などで検索すると有名医院にまぎれて「読むだけでピタリと手汗が止まる!ヒーリング療法!」みたいなのが山ほど出て来る。

パッと見た内容としては「リラックスすること」「緊張しないようにする方法」など基本的に「緊張するから汗がでる」理論に基づいている。

 

 

「死ね」と思う。こいつらは手掌多汗症のことを微塵もわかっていない。

前述したように、手掌多汗症の発汗は自分の意志や精神状態とは関係ない。それを「気の持ちよう」と断定し、こともあろうにヒーリング療法で考え方を変えれば手汗は止まるというのである。(しかもくそ高い)

人の弱みにつけ込み金を取るやり方がいかに汚いかを、皮肉にも手汗で学ぶことができた。

 

 

ちなみに、これも自分の意思とは関係なく、ピタリと手汗が止まりサラッサラになる瞬間がある。

発動条件はわからない。その瞬間だけ私は人間に戻り、100%のパフォーマンスで生活できるのである。

これを「絶対時間(エンペラータイム)」と呼んでいる。

「いまめっちゃ手サラサラ!やばい!一生このままだったらいいのになあ!」と感動しているうちにエンペラータイムは30秒位でおわる。

 

 

 

もし周りの人に手汗がひどい人がいたら、ぜひ理解してあげて欲しい。

おそらく私含め手汗に悩まされる人間は「周りの目」が一番の悩みなのである。

一人でいるときは濡らしっぱなしである。

 

 

 

長文を書いたせいかキーボードとタッチパッドがビショビショになってしまったので、この辺で失礼します。